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【ウェビナー開催報告】建材・建築業界の環境情報マネジメント最前線 ― EPD×建物LCA×BIMで培う市場競争力 ―

25.12.19

2025年12月3日(水)、K&ESG株式会社、SGSジャパン株式会社、BIMobject Japan株式会社の3社共催によるウェビナーを開催いたしました。
当日は多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。今回は、ご都合により参加が叶わなかった方や、改めて内容を振り返りたい方に向けて、ウェビナーのハイライトをダイジェスト形式でご紹介します。

■共催企業の紹介

本ウェビナーは、建築業界におけるサステナビリティとデジタル化を推進する以下の3社によって開催されました。

  • K&ESG株式会社:企業のCO2排出量算定やTCFD対応など、経営とESG(環境・社会・ガバナンス)の統合を支援するコンサルティング企業です。カーボンフットプリント(CFP)の算定や欧州電池規則などの海外規制対応支援に強みを持ち、サプライチェーン全体を通じた脱炭素化と企業価値向上をサポートしています。

  • SGSジャパン株式会社:スイスに本部を置く世界最大級の検査・検証・試験・認証企業であるSGSグループの日本法人です。あらゆる産業分野において、国際規格に基づく試験分析やISO認証、サプライチェーン監査などを提供し、製品やサービスの品質・安全性を担保しています。グローバルなネットワークと高い信頼性を活かし、企業のコンプライアンス遵守やサステナビリティ経営、海外展開を包括的に支援しています。

  • BIMobject Japan株式会社:世界最大級の建材・設備BIMコンテンツプラットフォーム「BIMobject」を運営する日本法人です。建材メーカーの製品をデジタルデータ(BIMオブジェクト)として設計者や建設関係者へ提供し、製品選定の効率化とメーカーのデジタルマーケティングを強力に支援しています。


■ウェビナーの概要

1. 建材・建築関係の環境規制動向とEPDの活用事例(K&ESG株式会社)

K&ESG社からは、国内外の建材・建築業界における環境規制の最新動向と、日本国内での活用事例・活用可能な補助金について解説がありました。

【海外の動向】
欧州(EU)や米国では、環境負荷の低い建材を優先的に調達する動きが加速しています。

  • EU:2025年以降は、改訂EPBD発行、改正CPR(建築製品規則)により環境要件が段階的に適用され、2030年以降には全ての新築建築物に対してZEB基準の義務化、WLC(全ライフサイクル炭素)評価の実施が必須となる見込みです。国ごとに取り組み内容やスケジュール感が大きく異なるので、自社の商材や商圏を基に戦略の策定が必要になります。
  • 米国:州ごとに対応が異なっており、脱炭素化に向けた法整備がそれぞれの州で進んでいます。特にカルフォルニア州やニューヨーク州などは、積極的な州の一つですので、これらの州でビジネスを展開している建材・設備メーカーは注意が必要です。

【国内の動向】
日本でも、2025年の建築物LCA基本構想の策定を皮切りに、建築物LCAの推進が進んでいます。2028年頃には大規模建築物での算定義務化も視野に入っており、省エネだけでなく「建物のライフサイクル全体での環境負荷の見える化」へとパラダイムシフトが起きています。それに伴い、建材・設備単位での環境影響評価も2025年から大きく加速しています。

【補助金について】
こうした流れを受け、国土交通省では建築物LCAの実施やBIM活用に対する支援を強化しています。BIM活用・LCA実施をおこなった場合に申請できる補助金制度がございます。
令和8年度も継続予定であるため、詳しくはこちらをご確認ください。補助金制度に対するご支援・ご相談もK&ESG社ではお受けしております。

2. EPD検証取得までのステップ(SGSジャパン株式会社)

SGSジャパン社からは、製品の環境情報を定量的に開示する「EPD(環境製品宣言)」の取得プロセスについて、認証機関の視点から詳しい説明がありました。

EPDの取得・検証は、概ね以下の5つのステップで進められます。

  1. PCR(製品カテゴリー規則)の選定:対象製品に適した評価ルールを確認します。
  2. LCA算定:LCAデータの収集を行い、ISO規格等に基づいて環境影響を計算します。
  3. EPD作成:EPDの生成、ISO14025に基づいたレポートを作成します。
  4. 検証:第三者検証機関による書類検証や現地調査を受けます。
  5. 公開:検証後、EPDポータルサイトにて登録作業を実施、ウェブサイト上で一般公開されます。(有効期限は5年間)

SGSジャパン社では、企業様の状況に合わせて導入から検証まで包括的なサービス提供を行っております。
LCA/EPDについての基本知識や規格・ガイドラインについての理解を深める研修を行うトレーニング、規格解釈支援を行うアドバイザリ、算定状況を踏まえた検証に足りていない部分のGAP分析、監査員による実地検証と企業様の状況に合わせたサービスを個々に提供し企業様のEPD取得・公開を支援します。

BIMobjectとサステナビリティ(BIMobject Japan株式会社)

BIMobject Japanからは、建設業界の人手不足や高齢化といった課題に対し、BIMデータがいかに貢献できるか、そしてサステナビリティへの対応について紹介しました。

 【BIMobjectでの取り組み】
BIMobjectのプラットフォームでは、ユーザーが製品を探す際、「サステナビリティ」フィルターを使用することで、環境配慮型製品を効率的に検索することが可能です。
このフィルターを利用することにより、サステナビリティに配慮したプロジェクト時など、環境に配慮した製品を見つけることができます。

 【Revit専用アプリ「Design.App」】
また、Revit専用アプリ「Design.App」の紹介を行いました。このアプリを使用すると、Revitモデルから直接クラウドへ同期し、建物のLCA(二酸化炭素排出量)を予測・生成することができます。材料を変更した場合の環境負荷への影響もリアルタイムで確認できるため、設計段階からの環境負荷低減に役立ちます。


■所感:これからの建材・建設業界に向けて

今回のウェビナーを通じて浮き彫りになったのは、「海外市場はすでに環境性能が競争の前提条件になりつつある」という現実です。EUや米国では、環境データが開示できない製品は市場から排除されるフェーズに入りつつあります。

日本においても、2025年以降の規制強化やロードマップを見る限り、今後サステナビリティを重視した「環境情報のマネジメント」が建設業のスタンダードになることは間違いありません。EPDの取得やBIMによるデータ管理は、単なるコストではなく、将来の市場競争力を高めるための重要な投資と言えるでしょう。

■お問い合わせ

本ウェビナーの内容に興味を持たれた方、より詳しい話を聞きたい方、またEPD取得やLCA算定、BIM活用について各社へ相談したいことがある方は、ぜひ下記のお問合せページよりご連絡ください。

[お問合せ内容]の[その他]を✓いただき、[備考]に「ウェビナー紹介内容について」とご記載ください。