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BIMデータで世界市場へ‐建設DXにおける情報整備
25.10.20
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建設業界は今、急速なデジタル転換期を迎えています。
設計、施工、維持管理に至るまで、あらゆる情報がデジタルデータとして管理される時代において、 メーカーが提供する製品情報もまた、「選ばれるかどうか」を左右する重要な要素となっています。従来のように、カタログやPDF資料だけで製品を紹介するだけでは、 設計者やゼネコンが求める「使える情報」としては不十分です。
今求められているのは、正確で構造化されたBIMデータ、 すなわち建築プロジェクトのワークフロー全体において即座に活用できるデジタル資産です。

1. 3Dモデルを「情報資産」に変えることが競争力になる
多くの日本拠点の製造メーカーは、すでに3DデータやCAD図面を保有しています。
しかし、それらは多くの場合「見た目の形状データ」にとどまり、設計者や発注者が活用するには情報構造が不十分です。このギャップを埋めることが、グローバル競争における新たな優位性を生みます。
BIM(Building Information Modeling)は、形状だけでなく性能、寸法、材質、エネルギー効率などの情報を一元的に管理する仕組みです。この仕組みに適合した製品データは、設計初期から施工、運用に至るまで継続的に利用されます。
すなわち、BIMデータは単なる設計支援ツールではなく、製品の信頼性と採用率を高める営業資産と言えます。
また、海外ではISO 19650をはじめとする情報管理基準の導入が進んでおり、メーカーが提供するデータもこの国際基準に準拠していることが求められています。
今後、国際プロジェクトへの参画や海外市場での製品採用を目指す企業にとって、BIMデータ整備は避けて通れない要件となっています。
2.国際標準に対応するためのBIMデータ整備とは
BIMデータ整備において重要なのは、情報の構造化です。
単なる3D形状ではなく、設計ソフトウェアやシミュレーションツールが理解できる形で、製品情報を「データ」として組み込むことが必要です。
代表的な整備要件は以下の通りです。
- 幾何学情報(Geometric Data):製品の寸法、配置、取付条件など
- 非幾何学情報(Alphanumerical Data):性能値、仕様、材質、電力消費量など
- 文書情報(Documentation):保証書、取扱説明書、技術資料など
これらを体系的にまとめ、EIR(Exchange Information Requirements:情報交換要求)やLOIN(Level of Information Need:必要詳細度)といった基準に適合させることで、発注者や設計者の求める精度で情報を提供できるようになります。
さらに、国際的なデータ共有を実現するためには、IFC(Industry Foundation Classes)やbuildingSMARTが推進するオープンBIM標準への対応が欠かせません。
オープンフォーマットで提供された製品データは、特定ソフトウェアに依存せず、どの設計環境でも利用可能であり、長期的な資産価値を保持します。

3. BIMデータの公開とマーケティングの融合
整備したBIMデータをいかに効果的に発信するかも、重要な戦略です。近年では、製品データをグローバルなBIMプラットフォーム上に公開することで、世界中の設計者が直接ダウンロードし、設計案に組み込むことができるようになっています。
特に注目されるのが、建設分野で広く利用されているBIMobjectプラットフォームです。
世界550万人以上の登録ユーザーを有し、年間3,000万件を超えるダウンロードが行われているこのプラットフォームでは、製造メーカーが自社製品を「設計段階で選ばれる存在」として発信できます。
このようなプラットフォームの特徴は単なるデータ共有にとどまりません。ダウンロード状況やユーザー属性、競合比較などのマーケティングデータが取得でき、製品認知や海外販路拡大における戦略立案にも活用可能です。
すなわち、BIMデータの公開は情報整備とマーケティングを同時に進める施策であり、「設計の現場で見つけてもらう営業活動」を実現します。
4. デジタル整備がもたらす実務上の効果
BIM対応のもう一つの利点は、設計から施工、運用に至るまでの業務効率化です。構造計算、設備計画、エネルギー解析などの各工程において、BIMデータがそのまま活用できることで、手入力や二重管理が減少し、プロジェクト全体のスピードと精度が大幅に向上します。
さらに、製品情報をIFCなどのオープン形式で保持しておけば、数十年後でも読み出し可能な長期的なデータ資産として活用できます。これは、製品のアフターメンテナンスやリニューアル時にも大きな価値を発揮します。
BIMデータ整備は一過性の作業ではなく、 「企業のデジタル基盤を形成する投資」であり、 それが最終的に国際競争力の強化につながります。
5.グローバル競争時代の情報戦略
世界の建設市場では、政府主導のBIM義務化が次々と進んでいます。欧州、北米、アジア諸国では、公共プロジェクトへの参入条件としてBIMデータの提供を求める事例が一般化しています。
この潮流に対し、日本企業が持つ高品質な製品と技術力を「デジタルで正しく伝える」ことが極めて重要です。
BIMデータの整備と国際標準対応を進めることは、単なる海外展開の手段ではなく、企業ブランドの国際言語化です。

6. 資料を通じて知る、BIMデータ活用の全体像
BIMデータの整備・公開・活用には、標準規格の理解、データ設計、プラットフォーム運用など、
複数の要素が関わります。まずはその全体像を把握し、自社にとって最適な進め方を検討することが重要です。
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建設DXの進展とともに、メーカーの役割も大きく変化しています。
デジタル化はもはや「特別な取組み」ではなく、市場で生き残り、選ばれ続けるための前提条件になりつつあります。
製品情報を正しく整備し、世界の設計現場に届けること。それこそが、建設業界の未来において「信頼されるメーカー」であり続けるための最も確実な道です。
