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建設の生産性のカギを握るメーカー

25.11.05

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生産性や予測可能性、「デジタル化」については誰もが語りますが、現場では今も同じ障害に直面しています。依頼内容の曖昧さ、部門間の対応の遅れによる予期せぬ問題、誰も必要としない重複図面、そして現場で信頼し切れないデータ。
しかしメーカーが正しい形でデジタル情報を提供すれば、この流れは変えられます。

これは話題性の高い言葉を追いかけることではありません。明確な情報タイムリーに共有し、目的に合った分量で、設計から現場、運用まで再入力・再確認・再作図なしで伝わることです。以下では、よくある課題と、それをメーカーがどう改善できるかを結び付けて説明します。

繰り返し起きる課題

生産性の低さと予測不可能性

最初から情報を軸に計画されることは多くありません。「合意どおり」ではなく「必要になってから」データが作られ、着工前からリスクが膨らみます。

ムダとやり直し

情報が多すぎると手が止まり、少なすぎると意思決定ができません。数字の二度打ちや図面の描き直しが常態化しやすく、負担が増えます。

調整の失敗

構造と設備が同じ空間を取り合い、性能(例:耐火)に関する情報が不明瞭なまま埋もれます。必要な入力が遅れ、時間的な衝突も後から表面化します。

立ち上げ時のギャップ

共有の作業環境を事前に十分テストしていないため、受け渡しが途切れ、現場の端末が必要な情報にアクセスできません。初めてのテストが本番環境で行われ、手戻りコストが膨らみます。

これらは「プロジェクトの問題」でもありますが、メーカーのデジタル提供の質はプロジェクトをコントロールする最も効果的な手段の一つなのです。

なぜメーカーが決定的か

設計者や施工者は、日々メーカーの製品情報を手がかりに判断します。製品が見つけやすく機械が読み取りやすく調整に使え現場でそのまま使える品質であれば、次の変化が起きます。

1) 推測から選択へ

寸法、許容差、接続条件、必要な作業スペース、性能値が明確なら、思い込みが減り、後工程の予期せぬ事態も少なくなります。

2) 調整トラブルの縮小

形状と属性が共通のプロジェクトデータに組み込まれる場合、空間・機能・工程の問題は早期に確認できます。

3) 現場のスピードアップ

デジタル墨出しや現場確認に必要な座標や基準が揃っていれば、図面から数値を転記する作業を止め、正確な設置作業を開始します。

墨出しの教訓:わかっている寸法を描き直させない

典型的なケース:設計者は従来の現場指示図を発行するが、施工業者は座標を直接読み取るタブレットや測量ツールを使いたい。ところが、モデルや製品データに信頼できる寸法情報がなく、図面・表・モデル間で識別子が不一致。結局、誰かが手で作り直すことになります。これは二重作業=二重のリスクです。

メーカーは、次を整えることで重複を防げます。

  • 正確な参照点(アンカー・固定・スリーブ等)と基準の定義
  • 設置の許容範囲必要な作業スペース
  • 耐火・遮音・省エネなどの性能値(自動チェックにかけられる粒度)
  • 図面・モデル・表・PDFで共通の安定した製品コード(識別子)

これらが揃って一貫していれば、現場はモデルをそのまま信頼できます。工程は加速します。

「多すぎる」と「少なすぎる」の間に正解がある

  • 過剰:見栄えは良いが重い3D、細部まで作り込みすぎ、属性も肥大。動作が重く、受け渡しで破綻しやすい。
  • 不足:属性が乏しく寸法も曖昧。結局、手作業の表計算と推測に戻ってしまう。

解決策:調整や空間確認に十分な軽い形状に、選定・適合・調達に役立つ必要十分な属性をのせる。
「見た目が派手なファイル」ではなく、「質問に答えるデータ」。

何を公開すべきか(実用チェックリスト)

1) 調整しやすい形状

  • 外形、接続位置、点検・保守スペース
  • 大規模でも重くならない簡潔な形
  • 近接表現が要る場合は詳細版を別に用意(明記)

2) 意思決定を動かす属性

  • 単位と丸め規則を含む寸法
  • 性能(耐火、遮音、効率、圧力・流量、耐荷重 など)
  • 適用条件と使用を避けるべき範囲
  • ライフサイクル(点検周期、消耗品、交換部品)

3) ミスを防ぐ一貫性

  • 唯一の製品コードを全媒体で共通化
  • ダウンロード/Web/PDFで同じ名称・同じ値
  • 更新日と変更履歴の明記

4) 取り回しの良い形式

  • 設計向けのファイルに加え、広く使える中立的な形式も用意
  • 属性は表計算/CSVでも提供(再入力なしで取り込み可能)

5) 現場直結の情報

  • 取付方法、許容差、穴寸法、基準点
  • 重量、重心、搬入・仮置きの注意
  • 試運転チェック項目と測定点

再作業の削減と予測可能性の向上

  • 早期に整合:形状と属性が整っていれば、修正コストが低い段階で空間衝突・機能不整合・タイミング競合を可視化。
  • 再作図の削減:レイアウトに必要なデータがあれば、“翻訳図面”は不要。
  • 期待値がそろう:明快な製品データは、無理のない工程と代替の少ない調達につながる。
  • 数値ズレの解消:単位と丸め規則をそろえれば、「合計が合わない」という問題が解消する

立ち上げ前に“フロー”を試す

  • 製品ファイルは共有環境に手直しなしで置ける
  • 別ツールへ出しても識別子が変わらない
  • 座標やクリアランスは現場のやり方と矛盾しない
  • 属性は表や見積・運用ツールに再入力なしで流し込める

早めの予行演習で不具合を洗い出し、本番前に直しましょう。導入前に修正すれば数時間で済みますが、導入後に修正すると数週間かかります。

メーカーのシンプル・プレイブック

  1. 最小限の必須データを決める(形状+属性の核)
  2. 一貫して公開(コード・名称・数値をそろえる)
  3. 二段構え(軽量の「調整用」と必要時の「詳細版」)
  4. レイアウト必須の要素を入れる(座標、許容差、取付・保守ゾーン)
  5. 複数形式で提供(設計向け+中立形式+CSV属性)
  6. 版管理(更新日と変更点を明記)
  7. 実ユーザーで試す(設計・調整・現場の声で改善)

行動の呼びかけ

メーカーのデジタル情報は、もはや販促物ではありません。 それは生産のための資材です。情報が遅い・あいまい・信頼しづらいと、プロジェクトは止まります。
軽い形状、必要十分な属性、安定した識別子、現場に直結する要素を備えたデータなら、共通のプロジェクトデータにも現場にもそのまま載せられます。そうなれば、指名が増えるだけでなく、プロジェクト全体が速く、安全で、読みやすく進みます。生産性向上は、高品質な製品データを一つずつ届けることから始まります。

参考・出典 (References/Sources)

1. ISO 19650-1~5 

2. Guidance Part 1~3

3. UK BIM Alliance Guidance Part A~E